木曽古文書館

江戸御本丸明細図-解説書 あとがき

慶長六年から明治維新まで、縁の地久々利に、先祖の足跡を少しでも残しておこうと、千村関係資料を中心に、ささやかな「古文書館」をつくってから足掛十年になります。この間草深い山里にもかかわらず、多くの方々に訪ずれていただき、心温まる思いと感謝の気持で一杯です。

古文書整理中「江戸御本丸明細図」と朱書した 東西五〇・五cm南北九〇・二cmの表・中奥・大奥・泉水描写彩色図を見つけ、ご専門の先生方に、それぞれの分野からご調査をお願いしましたところ、高いご評価をいただき、NHKテレビで放映されました。中日新聞でその記事が掲載されると、遠くは九州などからもお問い合わせがあり、江戸城に対する関心の深さを改めて知りました。

「ルーペで見なければわからない小さな部屋まで字が書いてあり、作事方絵師が丹精こめて描いたことがうかがえる」との先生方のおことばに、奥深く眠っていたこの絵図を世に出してやるのが、私に課せられたつとめではないかと、運営委員会にはかり復刻することになりました。

文化三年、焼失以来、本丸は再建されず、現在 堀や石垣などしか残っていませんが、徳川の威信をかけ、権力と技術の粋を集め、幕府政治の中枢として造り上げた、一万四千坪の壮大な本丸御殿を、絵図をとおして理解していただけるならば、復刻した意義があったと思います。

復刻にあたり、ご造詣の深さに甘え、何から何までご指導を賜わりました 名古屋市蓬左文庫の織茂三郎先生、また親身になって指針となるご助言を賜わり、幕藩における位置づけをしていただきました愛知学院大学法学部教授 林薫一先生、わざわざ東京から足をお運びいただき、時代考証など歴史的価値を裏付けていただき、ご著書「江戸城」により学ばせていただきました 日本大学法学部教授 村井益男先生、建築史の面から史料価値と学術価値を裏付けていただき、貴重さを教えていただきました名古屋工業大学工学部教授 内藤昌先生、郷土における位置づけをしていただきました可児市史編纂室長 中島勝国先生、そして奥ゆかしく題字を飾っていただきました 日展会員・愛知教育大学教授 黒野清宇先生方にたいし、ここに謹んで感謝の意を捧げます。

さらには復刻にあたり、現在望み得る最高の技術をもって、歴史の重みと、原図のありのままを伝えることを主眼に、絵図のいのちを、生きいきとよみがえらせ「美と心」を伝えていただきました、ナカシャクリニテブ㈱様に厚くお礼申し上げます。

平成十二年六月 久々利「木曾古文書館」において 木曾義明

ページの先頭に戻る